『ピューリタン』と言えば、16世紀から17世紀にかけて、イギリスに存在していた革命派

 

カトリックから分離し、当時の政治は貴族中心の政治だったところを庶民も政治に関わる事ができるようにした革命派と言う風に私は認識しています。

 

現在のイギリスの政治のスタイル『王は君臨するが統治せず』にしたのは、このピューリタンだと思います。

 

そんな時代背景の下にオペラの物語は、メロドラマで最後は珍しくハッピーエンドです

 

エルヴィーラと言う貴族の娘とアルトゥーロと言う王族に仕える騎士とまさに結婚式のその場で繰り広げられる出来事によって、エルヴィーラは狂乱してしまいます。

 

このQui la voce というアリアは、エルヴィーラが狂乱して歌うアリアです

 

何故狂乱してしまうのかをお話ししますと

 

アルトゥーロは結婚式に集まった人々の中に気高い夫人を見つけます。この女性こそ、先に清教徒軍により処刑されたチャールズ1世の王妃エンリケッタで、議会に招集され、お城に幽閉されていた元王妃。

王妃の身の危険を感じたアルトゥーロは、王党派の一員として王妃を逃そうと思い、エルヴィーラのヴェールを王妃に被せて脱出を図ります

 

それが突然に結婚式の最中に起こったので、何も知らされていないエルヴィーラは、アルトゥーロに裏切られたと思ったのでした。

 

それはそう思う事でしょう

 

なのでアリアの最初のメロディーは、完全に正気でない状態の中、裏切られた心中を切々と訴え歌います

 

ですから、楽譜上に書かれた下る半音階の連続するアジリタを、どう言う気持ちで、どう言う歌い方をするか、またどんな雰囲気の声がでてくるかは、想像がつくと思います

 

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オペラを歌う時には声色というのはほとんど使いません

 

むしろBELCANTOものの伝統的な歌い方というのがあって、声色は使ってはならないという決まりのようなものがありますから

 

やれる表現の範囲が狭まるのですが、ダメと言われないギリギリの歌い方があるとは思いますが・・・

 

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既に音の配列が、エルヴィーラの気持ちを表現した配列になっていますから、あまり考えすぎずにBELCANTOの発声で歌ったらよいと思います

 

只、心がエルヴィーラの心になっている事が肝心です

 

なので、ベルカント唱法は、オートマティックに出来ないと、心が完全にそれにはなりませんね

 

なので、ひたすら技術を磨かねばなりません

 

このアリアの後、場面も変わり、アルトゥーロはエンリケッタと逃亡しようとするのですが

 

その前に、エルヴィーラに一目会いたいと、エルヴィーラのもとへ帰って来ます

 

そして、事の成り行きを説明し、誤解が解けエルヴィーラは正気を取り戻すのですが

 

今度は政治が動きまして、アルトゥーロは逮捕され、清教徒たちによってアルトゥーロは処刑されそうになり、エルヴィーラも運命を共にすると誓いますが

 

死刑が執行されようとするその寸前、「ステュアート家が滅び共和国になった」と使者がまくし立て、アルトゥーロも赦免されます

 

二人は結ばれ祝福され、幕となります

 

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