私はね、子供の頃から、世界を飛び廻るオペラ歌手になりたかったのね。
大学も、首席で卒業する事を目標に頑張っていたの。でも、四回生に上がってすぐに、自分の身にアクシデントが起こって、経験の少ない無知な私は、それに対して上手く対処できなかったの。でも、こんなようでは、自分の人生、丸潰れになってしまうと思い、勇気を持って、そのアクシデントに立ち向かって行ったら、意外にアッサリ解決できたわけ。とは言っても、もの凄い我慢と、大きな決断と、大変な勇気が一年間ずっと続きました。それは、命を駆けた決断と勇気でした。でも過ぎてしまえば、アッサリだった訳ですが、でも大切な20代は丸潰れ。ずっと描いた夢を追うエネルギーは、いつのまにか消耗していました。そしたらせめて、日本の関西の中で、なんとかなろうと思って頑張ってみたけど、、何か違う。またそれで悩んで、何度も精神科の看板の前で立ちすくんで、ここへ行こうかな?とか、考えてた事がありましたが、それはせず、とにかく自分で生きる事をしようと思って、思いきって、所属していた関西歌劇団を退団。これもバッサリ。あれほど夢に見たオペラをバ
ッサリ。自分が描いた夢と、自分のその時の状態と、あまりに違い過ぎてしまって、心のよりどころもなく、気持ちを張り続ける事ができなくなったのだと思います。それから、でも腐るわけにもいかなかったので、カルチャーの声楽講師のお仕事を一生懸命にしました。ゆったり時間が流れて、心地がいいような気がしました。結局私は、あんまり激しい事、個性の強すぎる人間関係の中でやって行く強さがなかったのだと思います。それで今は、お陰様で大変幸せですが、世界を飛び回る誇り高きプリマを夢見ていた私が、お月謝の事や、お部屋代のやりくりなどで、チマチマ小銭を数える自分の姿にちょっと笑いが…。世界のオペラ歌手も、決して裕福ではありませんが、私の今の状態のような生活ではないと思うのはあきらかです。そう思った時、あ゛〜ぁ。とは思うけど、まーいいや、と笑えます。なんとも幸せです。
そして、歌の事に関しては、今までにも沢山、大オペラ歌手や、偉い先生方に手解きをしてもらいましたが、実は今が、一番、私の主観で、本物と思う先生に出会い、その周りにいる歌仲間達の事も、最高!と思える人達と一緒にいます。
今一緒にいる人達ほど、個性が強く、でも一番今までと違うのは、個性が強い上に、本物の才能を持っている事。そして、思いやりがあり人間が大きく優しい人達に出会ったような気がしています。おそらく、私が子供の頃に思い描いた、世界へと一番、直に繋がっている人達だと思います。今までにも、そう思う出会いはいくつかありましたが、最近の出会いは、ちょっと今までとは、薫りと空気が違うのを感じて、期待してしまいますが、それも、自分次第。自分の心の持ちようで、良くも思えば、悪くも思うものだと思います。全て、自分にかかっています。
まだまだ私は、向上心と、希望や夢を持ち続け、夢を持って歌を教え、歌を歌うと思います。